【書評】空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む

空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む (集英社文庫) 角幡 唯介

 

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取材を徹底したノンフィクションで、しかしそれはまるでミステリー小説を読んでいるようだった。

きっかけは、地図のない場所で眠りたいという高野秀行角幡唯介の本を読んだ事だった。昔から高野秀行のファンで、どういう本を読もうか迷っていた時に出会った。内容は旅ではなく、対談。それも本来、本では語られなかった生の感情や、苦労、なぜ旅に出るのかがそこには書かれていた。そこで初めて角幡唯介という旅人を知ることになった。

【書評】地図のない場所で眠りたい - dasblog’s blog

高野秀行とは全く違う文のスタイルだった。角幡は新聞社に勤めていただけあり、物語の切り方が非常にうまい。まるで映画を見ているような文章の切り方をしていたと思う。

それがこの本の醍醐味かもしれない。

 

映画のような本

映画は様々な時間軸が入り混じりやすい。過去から未来へ、現代から過去へと時間軸を交差することで、物語の深みを表現する。

この「空白の5マイル」は、かつてツアンポー峡谷に挑んだ歴史的な人物を綿密に取材し、ツアンポー峡谷を舞台を中心に様々な人物を描いていた。なぜこの谷が人々を惹きつけるのか、なぜこの谷が空白の5マイルというのか、なぜ角幡はこの谷を選んだのか、なぜ探検するのか。

その“なぜ”ということをこの本はだんだんと紐解いてくれた。

 

圧巻である。

 

なぜ旅の本に惹かれるのか

私は今社会人2年目だ。しかもある種、ブラック企業的なところに勤めている。朝から晩までパソコンを前にして、カタカタと作業をしている日々だ。いわゆる単調な日々と言ってもいいだろう。そんな私がここ最近読んでいるのが、こういう旅系の本だ。

おそらく現実逃避したいのだろう。いや、極度に文明化された社会から少しでも遠ざかり、そういう自然的な世界に没頭したいのだと思う。

旅の本は、私を違う世界に確かに連れていってくれる。今ここにいる自分とは明らかに違う自分になれる。かつて自分が少しでも思っていた世界に連れて行ってくれる。

 

読んでよかった。

人は想いがあれば目の前の状況を変えることだった簡単なんだと思わせてくれる本だったと思う。