【書評】ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か

エリヤフ・ゴールドラット

 

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この本は、まるで映画を見ていると錯覚してしまうような本だった。ストーリーが面白い。ぐいぐい引き込まれてしまった。

 

特に、組織という枠組みにおいてトップやリーダーの身の振り方によって、結果が全く異なることを示した本であると感じた。

トップとなる人物次第では、会社が沈む場合もあれば、浮上する場合もある。この本は、主人公アレックスが、物理学者ジェフからの、ソクラテス的問答法による諭しによって、気づきを得、工場の危機を救う物語である。

 

なぜ面白かったというと、様々なエッセンスが詰まっていたからだ。

単なるPDCAなど業務改善の内容だけではなく、諦めない力であったり、30代既婚者子持ちの男の苦悩であったり、人をいかに動かすのか、といったことがストーリーの中に散りばめられていた。

テーマが雑多といえばそうだが、ストーリーとして読むにはちょうど良い。

 

私が感じたことを分けて記載した。何が印象に残ったのか、下に順に書いて行く。

 

 

【1】トップの意思決定が会社を左右する

導入部分で印象に残ったのは、営業所長のビルが工場の立て直しとして、コスト削減をひたすら叫んでいたところだ。

人は目の前のことに精一杯になると、前が見えなくなってしまう。工場では誰しもがコスト削減を考えて行動しており、これ以上はコスト削減が難しい状態になっていた。では、コスト削減を各々が実行できているのにもかかわらず、なぜ業績が悪化していくのだろうか。

 

それはつまり、個々で見れば最適化された行動であっても、全体で見れば非最適化された行動ということもある。経済学でいう、合成の誤謬が起こってしまう。

最適な戦略なしに、ただ単に目の前の事象を解決しようと奮闘しても、負け戦に挑むようなものだ。俯瞰的に全体を見なければいけない。

 

それにはやはり、トップの戦略が大事であり、舵取りを間違えると従業員を含め、大事故につながりかねないと感じた。

 

経営を立て直すならば、主人公アレックスと同様に、分析力の高いカリスマ的な人間がなるべきだ。そして、そのカリスマ性を用いて周りの人間を自分の考えに賛同させ、信頼を寄せる人たちがそれぞれの経験や勘を駆使して、必要な手順を練り上げていかねればならない。

さもなくば船はあっという間に沈むだろう。

 

 

【2】指標を間違えると全てを間違える

どのように業績を理解するのだろうか。

まず三つの指標で分析する。それはスループット(入ってくるお金)、在庫(中に溜まっているお金)、業務費用(出て行くお金)である。左から順に重要となっており、いかに利益を上げるかを第一優先で考えなければいけない。

 

パフォーマンスの評価は、利益をいくら得ることができたかで測るのが一番最適だ。

なぜアレックスが工場の業績立て直しに成功したかと言うと、経費削減を指標にするのではなく、スループットを指標に置いた結果、行動や戦略が変わった。

尺度としては、スループットが一番であり、在庫が二番にきて、そして経費が三番となる。従来のやり方から全く逆にしたのだ。

 

なぜそんな非常識なことができたかというと、常識を疑ったからだ。

 

 

【3】問題を探し、解決すること

私は、ここがこの本の中で一番重要なポイントではないだろうかと考えた。なぜなら、問題の扱い方が書かれていたからだ。そして、この問題(ボトルネック)を見つけ、どのように生かすかによって、結果が全く異なる。

 

特になるほどと思ったのは、全体の生産性は、ボトルネックの生産性に等しいと書かれていた点だ。

確かに、今まで意識していなかったが、私が今やっているホームページ作成の一連の工程でもボトルネックが存在し、そこの納期が圧倒的に遅れている。したがって、全体の納期である2ヶ月以内では到底完成できない仕組みになってしまっている。つまり、ボトルネックの生産性が、製品の納期を左右していると言っても等しい身近な事例となっていると気づいた。

 

問題を探し、解決するステップは以下の通りだ。

ステップ1:ボトルネックを見つける(制約条件を見つける)

ステップ2:ボトルネックをどう活用するか決める(制約条件をどう活用するか決める)

ステップ3:他の全てをステップ2の決定に従わせる

ステップ4:ボトルネックの能力を高める(制約条件の能力を高める)

ステップ5:ボトルネックが解消したらステップ1に戻る

 

特に印象的なのはハイキングのシーンだ。

何気ない日常から気づきのヒントを得るストーリーはおもしろく、ボトルネックを見つけてからの改善方法のプロセスがわかりやすく展開されていると感じた。

 

 

【4】決して諦めないこと

アレックスは決して諦めなかった。どんな状況でも投げ出さず、懸命に考え、行動をとり続けた。それが努力として実を結んだに違いない。

そして、問題を一つ一つ解決していき、そのために手段を選ばず、人も動かす。問題を解決できるとなれば、ルールさえも破ってしまう。諦めない気持ちが勝利を掴んだといっても過言ではない。

ルールは何のために存在しているのか。会社の利益を最大化させるためである。しかし、いつの間にかルールは、人を縛るものに形骸化してしまう。“ルールあるある”である。

 

「これは一体何のために存在しているのだろう。」と自問自答し、それが利益を上げるのに障害物になっているのであれば、壊してしまっても構わない。

 

大事なのは自分の行動を信じる力かもしれない。

 

 

【5】人を動かす

物理学者のジェリーはまるでソクラテスのような問答法を使って、答えを考えさせる方式を取っていた。答えを導くために、人へ質問をすることの大切さが出ている。なぜなら、自発的な行動からしか結果は生み出すことができないと知っていたからだろう。

 

主人公アレックスも上手く人を動かしていた。工場従業員での会議のシーンが何度かあったが、全員が平等に意見を言っていた。現実でいうと、なかなか難しいかもしれない。だが、人の意見を否定せず、考えを導き出し、実行させるというのはアレックスのセンスなのかもしれないと感じた。

 

“自分たちで考えもせず、当たり前だと思ってやっている。だから答えを教えてはいけない。考えるためのヒントが必要なんだ。自分で試して見ないといけないからね。”-アレックス-

 

しかし、どの組織に属していても、よく聞くのは、マネジメントの難しさだ。どのようにして人を自発的に動かすのかという事が非常に困難だと誰しもが言っていた。

 

今のうちに私は、人を動かすための本を読むべきかもしれない。

 

 

【6】思考方法

問答法もそうだが、もう一つ重要な思考方法が書かれていた。それは、仮設をしっかりと立て、事実を導き出すということだ。

「IF THEN」といった形で、「もしも~ならば、~だ」と考え、本当にその結果が正しいかどうかを証明するプロセスが問題を解決するにあたり必要だ。

この本はコンサルティングの考えも一部取り入れている。

 

 

【余談】

私が最後まで気になったのは、主人公であるアレックスは一体いくらの金額を、工場の危機を救った物理学者ジョナに支払ったのだろうか。
それなりの報酬が発生したのは間違いない。